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【実話怪談】怪異ドライブ後編【怖い話】

車庫のあった場所から20分ほど走ると、頂上に着いた。

頂上の駐車場には観光客のものであろう車が3台止まっていた。

空いたスペースに駐車してセダンを降りる。頂上からの眺めは大したものだった。近隣の山々の濃緑が眼下に広がり、遠くには白くかすんだ都心のビル群が見える。街を離れて山奥へやってきたのに。なんだか不思議な感じがした。

駐車場の隅には山へ入るための階段があった。山好きな私は上ってみることにした。急な階段で段数は20ほどだったと思う。

階段から離れすぎない程度の距離を探索していたとき、

ざっざっざっざっざっざっ。

駐車場の砂利道を走る音が聞こえた。木々の隙間から階下の様子をうかがってみると、二人の子供が追いかけっこをしているのが見えた。鬼役の子供は5歳ぐらい、逃げ役の子供は9歳ぐらいだろうか。逃げ役の子供は赤いTシャツを着ていた(鬼役の子供の服装は覚えていない)。

駐車場周辺で見かけた観光客は、老夫婦が2組と30代ぐらいのカップルが1組。子供の姿はなかった。どれかの車に乗っていたのだろうか。少年たちは駐車場を端から端まで楽しそうに走り回ったあと、階上からは見えない駐車スペースの方へ走っていった。

数分ほどして下に降りると、もう子供の姿はなかった。車の台数は3台から減っていない。それとなく3台の車の車内を覗いてみたが、人が乗っている様子はなかった。頂上から1番近くの人家までは車で20分ほどかかる。歩けない距離ではないが、子供ふたりで人気のない峠道を上ったりするだろうか。

妙な寒気が体に走る。母に聞いてみた。

「ねえ。ここら辺を走り回ってた子供、どこいったかわかる?」

母が訝し気な顔をする。想像通りの答えが返ってきた。

「…え?子供なんていなかったよ」

 

私たちは行きと同じ道を使って峠を降りることにした。あの子供たちはなんだったのだろう。私は霊のようなものを見たときにすごく嫌な雰囲気を感じることがある。子供のころに墓場で見た黒い影、老婆におぶさる黒い人影。思い出すと今でも怖くなる。

でも、あの子供たちからは嫌な雰囲気を感じなかった。彼らはきっと楽しく無邪気に遊んでいただけなのだろう。ひょっとしたら狐か狸の類かもしれないが。

そんなことを母と言い合いながら、峠道を下っていくと例の車庫が見えてきた。

運転手は行きと変わらず私。行きは助手席越しにしか見えなかったが、今度はもっとじっくり観察できる。私は車を車庫の入り口に寄せ、サイドブレーキを引いた。

狐の面を見ようと窓を開ける。

お面は変わらぬ様子で車の背面部に取り付けられていた。何度見ても異様な光景だ。

ふと気が付いたことがあった。行きに見たときは気づかなかったが、車庫正面右の柱になにか紙のようなものが貼り付けられている。なにか文字が書かれているようだった。

ぐっと顔を近づけて読んでみる。

そこには白地に赤字で

「ぜ  っ  た  い  に  ゆ  る  さ  な  い」 と書かれていた。

私はそれ以来、子供が着ていたTシャツの赤色とあの文字を忘れられなくなった。